楽しかった撮影から５年ほど経ちました。その間に引越しがあり、多くのスライドが引き出しやダンボールの奥深くに眠っていました。きょうたまたまこのスライドを手にし、改めてライン右岸、左岸に列車を追った日のことを思い出しました。ここは右岸線、St. GoarshausenからKamp-Bornhofenの間です。丘に聳えるのは兄弟城として知られるシュテレンベルク城(Sterrenberg、左)とリーベンシュタイン城(Liebenstein、右）。午後になるとライン川を手前にして綺麗に順光になります。ちょうどICが右岸線に迂回している期間でしたので、ぜひここでICを捉えたいと思ってカメラを構えました。

この日は風が強く、雲が流れ、晴れたり曇ったり目まぐるしく陽射しの有無が変わりました。なぜか陽が差すと列車は来ず、翳ると列車が来ます。また陽が差しますと、そこへアスピリン塗装の101型が単機で来ました。しかし眼前に至る前にまた雲が・・・　そうしてじりじりと待つこと約１時間！　ようやく陽射しのもとにICがやってきました。それがこの写真です。列車の中央にはEC塗装の食堂車が見えます。今ではもうIC塗装に塗り替えられたことでしょう。・・・よく見ると、ライン川の中ほどから手前は翳っています。また山上のお城も淡い影の中です。帰国後すぐの時点ではそれが気に入らず、スキャナに掛けませんでした。

しかし５年を経ていま見ると、その微妙なコントラストがいい感じに思えます。この陽当り具合は稀有なものにさえ思えます。それに、この色合いの深さ！　緑が赤い機関車と白い客車を強く惹き立てています。最近のデジタル一眼レフカメラでは滅多にお目に掛かれない色合いに思えます。銀塩写真の奥の深さを自ら思い知りました。

この2002年と翌2003年はライン川に入れ込んだ年でした。訪欧の機会があれば迷わずフランクフルト経由を選び、寸暇を惜しんでマインツ〜コブレンツ間を訪れたものでした。その充足感は強く、その後はラインを離れ、むしろ山岳区間を志向しています。でも、こんな写真が出てくると、またラインに行きたくなりますね。